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きちんと知りたい、乳がんと早期検診のこと

近年、「乳がん」に関する話題が急増しています。一生のうちに女性の11人に1人(※1)の割合で罹患する現状をふまえても、今や乳がんは身近な病気といっても差し支えないでしょう。
そこで大切なのは、乳がんに関する正しい知識を持つことと、早期検診を行うこと。あらためて、乳がんについて考えてみましょう。

(※1)(公財)がん研究復興財団「がんの統計’16」年齢階級別罹患リスク(2012年罹患・死亡データに基づく)

乳がんにかかわる要因、知っていますか?

乳がんとは、乳腺にできる悪性腫瘍のこと。患者数の増加により、身近に知られる病気となりました。2016年の乳がんによる死亡者数は、14,130人(※2)。30年ほど前に比べると罹患数は3倍以上も増えており(※3)、女性のがん患者全体における乳がんの割合は20%超を占め、女性のかかるがんの中では最も発症率が高いというデータがあります(※4)。

こうした現状には、どのような背景があるのでしょう。乳がんにかかわる要因とはなんでしょうか。

まず体質的な要因として考えられるのは、生涯を通じた月経の期間です。乳がんの発症には女性ホルモンの「エストロゲン」が大きく関係しており、このエストロゲンが多く分泌されるほど乳がんのリスクが高まるといわれています。エストロゲンの分泌は月経と連動しているので、初潮が早く、出産歴が少なく、閉経年齢が遅いほど、乳がんのリスクが高まるというわけです。

もちろん、このような体質的な条件にあてはまっても、乳がんを患うとは限りません。発症に至るまではさまざまな環境因子が複雑に絡み合っており、上記のような条件下にあっても、乳がんを患わない人がたくさんいるのも事実です。

(※2)厚生労働省「平成28年人口動態統計月報年計(概数)の概況」第6表 死亡数・死亡率(人口10万対),死因簡単分類別
(※3)厚生労働省「平成26年患者調査(傷病分類編)」
(※4)(公財)がん研究復興財団「がんの統計’16」部位別がん罹患数(2012年)

生活習慣の見直しは、さまざまな病気の防止につながる

それでは、乳がんにかかりやすい生活習慣はあるのでしょうか。
乳がん増加の原因のひとつとして挙げられるのが、食生活の欧米化です。脂肪の増加はエストロゲンの過剰な蓄積を招くため、乳がん発症のリスク要因のひとつに考えられています。

また、飲酒と喫煙も無関係ではなさそうです。日本人女性を対象とした大規模調査では、飲酒量が多いグループと、飲んだことがないグループで比較したところ、前者の方が1.75倍も乳がんのリスクが高いことが判明しました(※5)。具体的な飲酒量は、エタノール換算で週150g以上、すなわちビールなら大瓶7本、日本酒なら7合程度が相当します。

喫煙においても、乳がんに限らず、さまざまな病気のリスクを高めることが知られています。厚生労働省研究班の調査によると、閉経前の女性では、喫煙による乳がんの発症リスクが吸わない人の3.9倍にも増大すると指摘されています(※6)。

近年の乳がん増加の背景には、こうした生活習慣の変化も影響すると考えられています。長い目で見れば、食生活や生活習慣を見直すことが、乳がんをはじめとするさまざまな病気の防止につながるといえるでしょう。

(※5)国立研究開発法人 国立がん研究センター 社会と健康研究センター 予防研究グループ 多目的コホート研究「飲酒と乳がん罹患との関係について」
(※6)国立研究開発法人 国立がん研究センター 社会と健康研究センター 予防研究グループ 多目的コホート研究「喫煙・受動喫煙と乳がん発生率との関係について」

「マンモ」と「エコー」それぞれの違いと受診に適している年齢

乳がんは、早期に見つけて適切に治療をすれば、9割以上のケースで治癒が期待できる病気です。そこで重要な役割を果たすのが、早期検診。ところが、最も乳がんの発症率が高い40~69歳の年齢層で過去2年間に乳がん検診を受診した人の割合は43.4%(※7)と、半数以下にとどまっています。身近な病気として認知されるようになったとはいえ、予防意識はまだまだ低いのが現状です。

乳がん検診にはいくつかの種類があるので、どれを受けたら良いのか分からないという理由で足が遠のいている方もいるかもしれません。そんな方のために、乳がん検診の種類と受診に適している年代についてご紹介しましょう。

●問診・視触診
しこりがあるかどうかを確認します。ある程度の大きさがないと判別するのは難しく、早期発見には向きません。

●マンモグラフィ検診
乳房専用のX線撮影による検査方法。触診では発見できない小さなしこりや早期がん組織の変化も捉えることができ、現時点では早期発見の有効性を最も評価されています。ただし、乳腺が発達している10~30代は、乳腺とがんの判別がしづらいというデメリットも。40代以上の方は、必ず受けたい検診ですが、40代以上の方でも「高濃度乳腺」に該当する人はマンモグラフィだけでは病変を見逃すリスクがあるため、超音波検査との併用が推奨されます。

●超音波検診(エコー)
乳房に超音波を当て、腫瘤などの病変を検出する検査方法。乳腺の影響を受けにくいため、20~30代向きの検診といえます。また、リアルタイムで検査結果を知ることができ、妊娠中も受診できる点もメリットです。

現在、厚生労働省では、40歳以上の女性に対し2年に1回のマンモグラフィ検診を推進しています。それ以外にも、各自治体や加入している保険の費用負担、近親者に乳がん経験者がいるかどうかなどを確認して、どの検診をどのくらいの頻度で受けるべきかをご自身で判断することが大切です。

(※7)厚生労働省「平成25年国民生活基礎調査の概況」III 世帯員の健康状況

意外と知らない?「ピンクリボン」に込められた意味

近年の乳がん増加にともない、日本のみならず世界中で「ピンクリボン運動」が盛んに行われています。ピンクリボンは、乳がんの早期発見、早期診断、早期治療の大切さを伝えるシンボルマークとして知られています。その始まりには諸説がありますが、アメリカ合衆国の小さな町で、乳がんで亡くなった女性の家族が「同じ悲しみを繰り返さないように」との願いをこめてつくったリボンに端を発するとも。舞台は1980年代。まだ乳がんについての研究も、深刻な病としての認識も浅かった時代のことです。

90年代に入り、ピンクリボン運動は、欧米を中心に急速な広がりを見せ始めました。10月1日は「ピンクリボンデー」に制定されており、乳がんについての意識向上に貢献しています。近年では、政府や企業、市民団体の賛同を得て、日本でも活発に行われているのはご存じの通りです。

早期発見が大きなカギを握る乳がん。周囲の大切な人のためにも、定期的な検診を必ず受けるようにしましょう。

監修:清水なほみ
(All About「女性の病気」ガイド)
女性医療ネットワーク発起人・NPO法人ティーンズサポート理事長。日本産婦人科学会専門医で、現在はポートサイド女性総合クリニック・ビバリータ院長

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