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脳卒中で倒れたら…40代経験者が語る、「その時」と「その後」

「脳梗塞」や「くも膜下出血」など、高齢者の病気と思われがちな「脳卒中」。しかし、意外にも若くして発症するケースもあるのです。もし、働き盛りの年齢で脳卒中になってしまったら……。入院やリハビリなどの治療費に加え、日々の生活費などのお金について、あらためて考えてみませんか?

「起きたら右手右足に力が入らなかった」診断された病名は脳梗塞

ある日、突然起こることの多い脳卒中。フリーランスライターのコヤマタカヒロさん(当時44歳)を襲った異変も、いつもと変わらない日常の中で起こりました。

コヤマさん「朝、起きたら右手右足に力が入らなかったんです。まっすぐ立とうと思っても、すぐに右に傾いてしまう。2階のリビングに這うように上がり、妻に手足の状態を話したら『すぐ病院に行こう』と言われ、妻の運転する車で病院に向かいました」

かかりつけの病院に到着すると医師の診断を受け、すぐに大きな病院に向かうように指示されたコヤマさん。歩いて10分ほどの距離にも関わらず救急車を用意されたそうです。そして、大きな病院でMRIなどの検査を行い、診断された病名は「脳梗塞」でした。

コヤマさん「今考えると、その数日前にスマホを持っていた右手がスッと落ちてしまうことがあったんです。疲れているのかと考えて気にしていなかったのですが、もしかしたら予兆が始まっていたのかもしれません」

そもそも脳梗塞とは、動脈硬化や血栓などによって脳内の血管が詰まる病気。脳の中の血管が破ける脳出血やくも膜下出血と合わせ、一般的に脳卒中と呼ばれています。現在、脳卒中で継続的に治療を受けていると推測される患者数は117万9000人(*1)、また、日本人の死亡原因において、がん、心疾患、肺炎についで4位になっています(*2)。

*1 参考:厚生労働省「平成26年 患者調査の概況」
*2 参考:厚生労働省「平成28年 人口動態統計(確定数)の概況」

それでは、脳卒中になると、どのような症状が現れるのでしょうか。

コヤマさん「私の場合は、右手右足に力が入らなくなり、顔も右半分が動かなくなりました。ただ、失語症はあまりでなかったので、それは不幸中の幸いでしたね」

脳卒中のうち脳梗塞と脳出血は、脳のどの部位で起きたかによって症状が異なります。代表的なのは、コヤマさんのように半身まひになるケース。そのほか、言語障害や認知症、重度の場合は意識がなくなってしまうこともあります。

脳の血管の一部にできた動脈瘤が破裂して出血するくも膜下出血の場合は、まひが起こることは少ないものの、突然激しい頭痛に見舞われたり、意識障害が生じたりします。いずれにしても脳卒中は一分一秒を争う病気のため、これらの症状が現れたら、すぐに救急車を呼んで、きちんと検査を受けなければなりません(*3)。

*3 参考:厚生労働省「e-ヘルスネット」

脳卒中というと、多くの方は高齢になってから発症するケースがほとんどだと思っているかもしれません。しかし、コヤマさんのように50歳以下で発症する「若年性脳梗塞」などもあります。実際、脳卒中を含む脳血管疾患の治療や経過観察などで通院している患者の約14%が20〜64歳の就労世代というデータ(*4)もあり、若くして発症するケースも少なくないのです。

*4 参考:厚生労働省「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン 参考資料『脳卒中に関する留意事項』」

「10日で退院」が「半年かかる」に…長期リハビリで復職が難しいケースも

脳梗塞と診断されたコヤマさんですが、病院ではどのような治療を行ったのでしょうか。

コヤマさん「病院に行ったその日からICUに入れられ、血栓を溶かしてこれ以上詰まらないように点滴による治療が始まりました。私の場合は、右手右足の動きが悪いだけで痛みはなく、吐き気などの症状もなかったので、ベッドの上でスマホを使って仕事の予定をキャンセルするなどの連絡をしていました」

入院翌日にはリハビリスタッフによる症状の確認が行われ、右手右足がどれくらい動かせるかといったテストを受けたそうです。その結果、それほど重篤ではなく、医師から「10日くらいで退院できるかもしれない」と言われたとのこと。しかし、事態は予想もつかない方向へ進んでいきました。

コヤマさん「入院して3日目くらいのころに、急に右手右足の動きがさらに悪くなり、次第にまったく動かなくなっていきました。私がかかった脳梗塞は比較的軽度なことも多い『ラクナ梗塞』と言われるものだったのですが、その中でもあとから症状が悪化するタイプだったのです。当初10日くらいと言われていた入院期間も、症状の悪化によって『半年くらいかかるかも』と伸びてしまいました」

死亡原因の4位である脳卒中ですが、近年は医療の進歩により死亡率は低下し、就労世代の患者の約7割は、ほぼ介助を必要としない状態まで回復するとされています(*4)。しかし、そこまで回復するには長い期間リハビリを続けなければならず、コヤマさんのように「半年くらい入院が必要」と言われるケースも少なくありません。

また、職種や職場環境によって違いがあるものの、たとえ症状が回復したとしても最終的な復職率は50〜60%と言われ、復職できたとしても一般的に3〜6ヶ月後、あるいは1年〜1年半後というタイミングが多いとされています(*5)。

*5 参考:厚生労働省「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン 参考資料『脳卒中に関する留意事項』」

コヤマさん「私はライターなので、病室で仕事をすることができましたが、職種や会社の規模によっては復職が難しいケースもあると思います。もし私が体を使って作業する仕事をしていたら、復職は難しかったかもしれません」

長期入院で生まれる不安…病気で働けなくなったときに受けられる公的保障は?

脳卒中によって手足にまひが残り、職場復帰するためのリハビリに長い期間を要すると知ったとき、さまざまな不安が生まれてきます。その一つがお金の問題ではないでしょうか。

コヤマさん「入院期間が10日くらいと言われたときは、さほど気にしなかったのですが、半年となるといろいろな不安が出ましたね。特にフリーランスなので、仕事をしなければ収入が0になってしまうので……」

会社勤めをしている場合、多くの人は「社会保険」に加入しているため、働けなくなったときに公的な保障が受けられます。例えば、病気休業中に被保険者とその家族の生活を保障してくれる「傷病手当金」がありますが、働けない期間も社会保険料は支払い続ける必要があるため、実質的に受け取れる額は少なくなってしまいます。また、「傷病手当金」は、自営業者等が加入する国民健康保険では一般的に支給されません。
そのほかの公的保障としては、年金加入者が病気やケガなどにより生活に支障が出た場合に支払われる「障害基礎年金」があり、65歳から受け取れる「老齢基礎年金」とは異なり、要件を満たしていれば若い人でも受給できます。なお、受給額は症状によって認定される等級に応じて決まります。

医療費が高額になる場合は、「高額医療費制度」も利用できるでしょう。1ヶ月にかかった医療費が高額になった場合、その人の所得額に応じて決められた自己負担限度額を超えた分を払い戻される制度です。ただし、差額ベッド代や入院時の食事代など、「高額医療費制度」ではカバーできない費用もあり、それは全額自己負担になります。

医療費や生活費、「公的な保障だけでは不安」という人のために

このように公的保障はいくつかありますが、それだけで今までと変わらない生活が送れるか不安な方も多いでしょう。実際、脳梗塞の治療費(*6)の平均自己負担額は約18万円、脳出血の場合は約20万円と言われており(*7)、もし、家族を養っている立場であれば家族の生活費もあるので公的保障だけでは限度があると言わざるを得ません。

*6 治療費=診察、薬剤または治療材料の支給、処置・手術その他の治療などにかかる費用。
出典:「保険診療の理解のために【医科】(平成28年度版)」(厚生労働省)10ページ「Ⅳ 保険医療機関及び保険医療養担当規則について」(1) 療養の給付の担当の範囲(第 1 条)から抜粋
*7 参考:厚生労働省「医療給付実態調査 報告書 平成27年度」

コヤマさん「私の場合、妻と子ども3人の生活費を確保するため、病室で仕事をしていました。ただ、右手が動かないのでキーボードが打てず、まずスマホに音声入力し、その原稿を左手のフリック入力やPCを使って修正していたのです。音声入力をするので、ほかの患者さんがいる大部屋で仕事するのは難しく、差額ベッド代を払って個室に入院していました」

コヤマさんは、いざというときに収入がなくなると困ると考え、20代のときに十分な保障がついた保険に加入していたそうです。さらに、母親が入れてくれていた保険もあり、その2つの保険を使って、差額ベッド代や入院時の諸経費といった医療費を払っていたとのこと。「もし2つの保険に入っていなかったら、差額ベッド代を払うことができず、入院中に仕事するのは難しかったかもしれない」とコヤマさんは振り返ります。

社会保険だけで医療費や生活費のすべてをまかなうのが難しい場合、頼りになるのが民間の保険です。その中には、長期間働けなくなった場合に毎月給料のように給付金を受け取れる「就業不能保障」というものもあり、万が一のときのために、そうした保険を検討しておくことも大切でしょう。

コヤマさん「20代で保険の加入を考えたとき、私は就業不能保障としても使えるように手厚い保障の保険を選びました。それから20年のうちに、解約してもっと保険料の負担が軽い保険に変えようと考えた時期もあったのですが、こうした病気になって、加入し続けて本当によかったと思っています」

現在、コヤマさんは4ヶ月間の入院を経て、杖がなくても歩けるほどに回復しています。ただ、今もリハビリは続け、少しずつ日常の生活や仕事を取り戻しているとのこと。

コヤマさん「退院して街に出たとき、スーツを着て杖をつきながら歩いている人が多いことに驚きました。その中には杖のつき方から自分と同じ症状と分かる方もいて、自分よりも重い症状の方もたくさんいました。多くの人が脳卒中を患いながらも仕事に復帰している。自分が病気になって初めて知る事実に驚くと同時に、強く勇気づけられました」

脳卒中は、若くても突然起こりうる病気です。普段から健康管理を十分に行っておくことはもちろん、万が一発症したときのための対策も、しっかりと考えておいたほうがよいでしょう。

話をうかがった方:コヤマ タカヒロ
(フリーランスライター、All About「デジタル・白物家電」ガイド)
1973年生まれ。キッチン家電を愛するPC&デジタル家電ライター。日経トレンディ、東洋経済オンライン、モノマガジン、MonoMax、デジモノステーションなどで執筆。三女の父。

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